72号 2005.12月発行

―――――――おばあちゃんの手仕事―――――――

金屋町の奥さんがたは働き者で、しっかり者です
町を支えているのは奥さんがたの力です
金屋へお嫁に来るとお姑さんから色々なことを教わります
やがてお姑さんになってお嫁さんに伝えていきます
私もお嫁にきたころ
おばあちゃんの横で座布団の作り方を教えてもらったものです
6月に嫁に行ったひ孫のために夫婦座布団を作ってくださいました


座布団の作りかた・・・・・・講師:おばあちゃん


四角い布の一辺を残し、袋状に縫います。

縫った布の上に半透明のビニールを敷いて、布の大きさに合わせてビニールの上で綿を重ねます。

適度の厚さになったらビニールで包むようにして布へ入れます。

全部入れたらビニールだけを引っ張り出します。

口を縫い合わせて完成です。

色違いの布で同じものを作ると、夫婦座布団になります。



日常生活の中の手作りの品々・・・・・・作:おばあちゃん

我が家の布団は全ておばあちゃんの手づくりです。ふわふわしなくなったら、解いて綿を打ち直しに出して、布を洗ってのりをして、また縫い直します。だからいつも気持ちのいい布団です。
仏具のおリンなどの下に敷く座布団です。写真は普段使っているもので、仏事のときに使うきれいなものは蔵にしまってあります。
着なくなった着物を解いて、綿入れのはんてんや袖なしを作ってもらいます。袖なしをトレーナーの下に着るととても暖かで、寒い日でも活動的になれます。
使い古しのバスタオルやいらなくなった布を縫い合わせて、湯上がりマットや敷物を作っていくつもしまってあります。お金をかけずにいつも清潔なものを使うことができます。
おばあちゃんは若い頃、お店の着物を縫っていました。写真は私の娘が生まれたときに縫ってもらったものです。これを着ていた娘が嫁にいきました。



おばあちゃんの味
この地方の食べ物で「かぶらすし」というものがあります。にぎったすし飯の上にかぶがのっかったものではありません。かぶにさばやぶりを挟み、こうじで漬けて発酵させた漬物です。子供のころは嫌いで食べませんでしたが、今は冬に無くてはならない食べ物となりました。
 おばあちゃん手作りのものを食べていると、お店のものはこうじのうまみが足りなくて口に合いません。嫁にきてから、主人のおばあちゃんに習って作りはじめました。塩漬けにしたかぶに、酢にくぐらせた塩さばの切り身を挟み、それをこうじ、かぶ、こうじと交互に重ねて漬け込みます。一週間ほどすると熟れておいしく食べられるようになります。手順は簡単です。しかし、かぶの切り方、塩加減、こうじの量、発酵具合、それにその年の気温に左右されるので、おいしいものを作るのはとても難しいのです。おばあちゃんに横で見ていてもらうから作れるのです。紙に書いてあるものを見ているだけでは、本当に食べられる物になったかどうか心配だと思います。
 数年前からおばあちゃんは何も言わなくなり、一人で作っています。家族も親戚の人たちもおいしいと言ってくれます。ようやくおばあちゃんの味に近づけたのだと思います。それと、忘れてはいけないのは、漬物部屋に住着いている漬物の菌の力です。私が作ってもこの家の味になるのは、彼らの力のおかげかなと思います。
 一週間前に漬けた物を、昨日食べてみました。今年もおいしくできました。