58号 2004.10月発行
 

―――――――伝統工芸師さんを訪ねて A―――――――

・・・・・・「花器菱峰瓶(カキヒシホウヘイ)」作:伝統工芸師金谷清
底面は正方形で、上へいくほど菱形になるようにねじれている。
非常に難しい技術を要する。


雲龍風炉 六角鬼面風炉 朝鮮風炉 九寸


作品作りの工程
中子(写真左上)を作る

「中子」とは、風炉のなかの空洞の部分。
製品(写真右上比べやすくするため逆さ状態)の鋳型より数ミリ小さい鋳型を作る。
その型で砂を固めて、中子を作る(左下の写真)。製品より数ミリ小さいものができる。
中子を乾燥させる(右下の写真)。えんとつ状のものの中で炭が燃えている。


鋳型を作る

引板をまわして鋳型を作る。
(中子の型をつくるときは製品の引板の数ミリ小さい引板をまわして作る)
鋳型の組み立て

外型の中へ中子をいれる。
外型と中子の間に数ミリの隙間ができる。
(その隙間に溶けた銅が流れ込んで固まり、製品となる)
鋳込み

右の写真は鋳型を組み立てたもの。
上の中央の穴から溶かした銅を流し込む。
型ばらし

外側の型をはずす。
中の中子をとる。
中子は砂を固めたものだから崩して取り除く。
仕上げ

きれいにする。
着色
なでしこの部屋
鋳物師冥利

「大昔からずっと同じことをしとる。」泥を型に詰めながら、金谷さんがおっしゃる。「新しい方法で機械を使ったりしてやっとる人もおるけど、私は昔のままのやり方でやっとる。それやから一つずつしか作れん。」何気なくおっしゃったけど、誇りのこもった言葉に聞こえました。金谷さんには、何十年もの努力を積み重ねた技、神経を研ぎ澄ませて培ってきた勘が沁み込んでいます。
「人類が金属の利用を知った数千年前からほとんど同じ工程で作られ続けてきた。」と、鋳物の文化史(小峰書店)に記されています。鋳物作りは、わが国へは弥生時代の中期(紀元初年の頃、伝わってきました。そのころの人たちは、鋳型を壊してでてくる製品にどんなに心躍らせたことでしょう。宇宙旅行の可能なこの時代にも、金谷さんはあの時代の人々と同じ喜びを感じていらっしゃる。人間ならではの創造の喜びを。