57号 2004.9月発行

――――――伝統工芸師さんを訪ねて @――――――

・・・・・・「双型八角風炉」作:伝統工芸師金谷清(平成11年作)
八角形の原型を割り出し、溶解した金属を鋳型に流し込んで作られる。
ヤスリ仕上げの後に研磨。そして鋳肌の美しさを表現するため最後は炭で磨かれる。
着色の仕上げを考慮して地金の配合にもこだわっている。

 金谷 清 昭和6年生
昭和21年
   57年
平成 2年
    4年
    5年
   10年
   14年
   15年
祖父由太郎に師事し技術を習得
高岡伝統工芸産業優秀賞
高岡の技展 技賞
伝統工芸高岡銅器振興協同組合経営功労賞
高岡市伝統工芸産業技術保持者に指定
伝統工芸師に認定
伝統工芸中部経済産業局長賞
勲章「瑞寶單光章」受賞

参考:高岡巧美会設立30周年記念誌
糸目瓢箪風炉 小瓶掛菊 花器大青波(ダイセイハ)



金谷さんの語録
考えて工夫して、失敗してまた考えての繰り返しで50年。父親に学んだけど何も教えてくれない。ただひたすらよく見て、まねて、うまくいかなくても自分で考えてみるしかなかった。
力の入れ加減など、勘にたよる部分と、厚みはキチンと計るなど正確でなければならない部分がある。仕上がりを美しくするためには丁寧な仕事をしなければならない。手を抜くと、溶けた金属を入れたときにバーンと割れてしまう。 金吹(溶かした金属を型に流し込む作業)の日の2〜3日前から気がたっていらいらしてくる。家にいるとうちのやつ(奥さん)にあたりちらす。それでも解っとるから黙って、いい作品ができることを願ってくれとる。
重い物を持ち上げたり、動かしたり、中腰のまま行う作業が多いから腰を痛めてしまう。それに、泥を扱うことが多いので手が荒れて汚くなる。宴会でお給仕してくれる仲居さんに「トラックの運転手さんけ?」とよく聞かれる。「そうや」と答えておく。(笑)

鋳物作りの作業を見せていただくと、
性格、生き方がそのまま作品に表れてくるように思えた。
称賛される作品を作りだせるということは、
称賛される生き方だと言ってもいいのではないだろうか。

なでしこの部屋
夫婦二人三脚

伝統工芸師の金谷さんとは子供のころ家族ぐるみでおつきあいをしていました。奥さんや娘さんとは温泉へいったりもしました。今回金谷さんを訪ねると、「あのころの写真を見るとなつかしいね」と、昔話に花が咲きました。昔と変わらず明るく接してくださる奥さんを見ていて、「女房はありがたい」と工房で話してくださった言葉がうかんできました。「金吹き(鋳込み作業)が近づくといらいらして当り散らすけど、女房はわかっていて黙っていてくれる。」
金吹きは鋳物師にとって非常に重要な作業でした。火を扱う緊張感と、作品のできばえが気になる不安定な気持ちが入り混じるのでしょう。奥さんはすべてわかっていらして、無事に作業が終わることと、良い作品が出来ることを祈っていらしたのだと思います。
勲章をいただかれた皇居での写真を見せてもらいました。お二人とも、一仕事やり終えた充実感に満ちたお顔で並んでいらっしゃいました。