「馬のくそ」饅頭

私が自治会の世話をすることになったとき、しばらくしていなかった地蔵祭りをすることにした。お地蔵さんには「馬のくそ」をお供えしなければならないという話になった。

えっ、何でそんなものをお供えするのですか?

そうではなくて、お饅頭のことだ。似ているということで、おもしろがってそう呼んどったがや。そこで、和菓子屋さんに「馬のくそ、くだはれ(ください)」と電話したら、ガチャンと切られた。

一同、大爆笑。そりゃそうでしょ。

訳を話して特別に作ってもらってお供えした。その後、和菓子屋が店に出して売ったところ、評判がよかったそうや。それで金屋からの注文で生まれた饅頭だから「やがえふ饅頭」という名前にしたそうな。

あれはおいしいお饅頭ですよね。そんな話があったとは知りませんでした。でも饅頭にしてみればちょっと失礼な話ですね。

そういえばあの時代は道のあちこちに「馬のくそ」が落ちとった。自動車は少なくて馬車がたくさん通っとったからね。しかしこれが嫁はん泣かせやったそうや。家の前をそうじしとった嫁はんが隣の家との境にあったのを片付けようとすると、姑はんが「そこは隣やからそのままにしときなさい」という。片付けなかったらなかったで道ゆく人に掃除をしない嫁だと思われやしないかと、気にかかるということや。

昔の生活感があらわれている話ですね。

饅頭


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